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2012年5月

2012年5月27日 (日)

第98号 トドス・サントスを守る人たち

妹の子守をする少女。彼女は写真を撮ってと言ったが、恥ずかしがって隠れた子もいる。


トドス・サントスではいろいろな過去の記録などを見聞きした。先ずは、先回書いた競馬や死者の日などを扱った現在の行事と生活記録。アメリカ人のジャーナリストが製作したというトドスサントスの戦前と戦後を扱った二つのドキュメンタリー。ノーベル賞を受賞したリゴベルタ・メンチュウの語りによる戦争時の様子のビデオ。村の小さな博物館の館長によるトドスサントスの出稼ぎの変遷の講義などだ。

 これらの映像や講義を通して、トドスサントスがどのようなところなのか、過去の習慣文化がいかに変容していったのか、あるいはさせられていったのか、破壊されていったのかがよくわかる。

 グアテマラの村をきちんと調べたわけではないが、このように自分の村の過去を残し未来につなげて行こうとするような試みはそのほかの地では見たことがない。スペイン語学校がそのようなビデオや講義を公開し残す大きな力になっているようだ。まだまだ一部の人たちの活動・努力だが、その一部の人たちのトドスサントスの伝統文化を大切に残していきたいという気持ちが強く感じられる。以前のブログにも書いたが、ラジオ放送を通じて現地のマム語で情報を伝えて行こうとする熱心な試みにもそのことは読み取れる。

 

 村の中心部からホームステイをしていた家に帰る途中の高台に遺跡がある。こんもりした古墳を思わせる小さな盛り土の上に木が植わっているだけで、何の標識があるわけでもなく、見ただけでこれを遺跡と理解するのは難しい。正面に大きな十字架が2本立っている。そのうちの1本は、内戦時に軍によって殺された人たちの慰霊の十字架だという。

 そんな悲しい思い出も秘めた遺跡なのだが、その遺跡あたりから見るトドス・サントスの町は美しい。標高2500メートルのこの村の、さらに高台に位置するこの場からは、しばしば雲が眼下に見える。あたりの家家の庭にはリンゴがたわわに実をつけている。ウイピルと呼ばれるきれいな民族衣装をつけた女性たちがとおっていく。絵のような風景だ。日本の旅行案内書「地球を歩く」の中米編にはこの村を桃源郷と書いてあった。何をもって桃源郷と書いてあるのかは知らぬが、少なくとも景色に関していえば桃源郷と表現しても大げさではない。

 この絵の様な美しい景色とともに、この地の文化が伝承され発展してくことを乞い希う。

2012年5月19日 (土)

第97号 競馬

トドス・サントスの名物の一つに競馬がある。絵葉書にもなっていて,その絵ハガキは、グアテマラ中の観光地でよく見かける。開催は毎年11月2日だ。この日は多くの人でこの町は埋め尽くされるという。早くから予約してないと、宿が取れないそうだ。

 スペイン語学校の先生と、馬が走りまわるという場所を歩いた。何も競技場があるわけではない。いつもは生活道である道幅3メートル以下のでこぼこ道が会場だ。こんな場所であの有名な競馬が行われるとは信じられない。

 11月に当地に居たことはないから、実際にこの目で見たことはないのだが、スペイン語学校で、そのビデオを見た。人々がどのように準備をし、期待をし、この日を迎えるのか、当日の様子はいかなるものか詳細な記録だった。生活記録としてもとても面白い。

さて11月2日当日、各家々には親せき縁者をはじめとするたくさんの訪問客でごった返している。朝から宴会が始まる。大会が始まるころは皆へべれけだ。訪問客だけではなく、馬に乗る人本人もへべれけだ。

 大会が始まる。酔っ払って馬に乗れない人もいる。なんとか乗りはしたが、途中でずりこけてしまう人もいる。出発の笛が鳴る。一斉にスタートだ。騎手は必死の形相で馬の腹をける。道の両脇の鈴なり状態の見物客からはヤンヤの声援だ。しかし走る馬と見物客の距離があまりにも近い。あれでは毎年多くのけが人が出るに違いない。

 しかし、けが人はともかく、このレースはなんだか変だ。片道500mくらいだろうか。何回も同じ馬が、同じ人が行ったり来たり走り回っている。ゴールはいつだ?

どうもゴールはないようだ。競馬と思っていたが、速さを競うのではないという。速さだけでなく、競うものは何もない。馬に乗り、一日中延々と続く、村を挙げての単なる走りっこらしい。

 単なる走りっこに何故、乗る方も見る方も皆あれだけ興奮する? 僕にはどうもよく理解できない。前にも何かの時書いた記憶があるのだが、面白さ、楽しさの概念がどうも違うようだ。でも間違いなく、村人たちはこの日を待ちわび、楽しんでいる。

 尚、前日の11月1日は「死者の日」というグアテマラの主要な祭日だ。この日は、皆墓地に集まり、墓地の上で飲めや歌えの大騒ぎである。スペイン語教師の話によれば、トドスサントスでは、この「死者の日」の主役は女性であり、あくる日の競馬?の主役は男性だという。いずれにせよ、二日続けてばか騒ぎのできるとても大切なお祭り日には違いない。

2012年5月13日 (日)

第96号 留置場

 トドスサントスの中央公園の向かいに質素な建物がある。小さな窓には鉄格子がはめられている。いつもは静かで誰も住んでいる様子はないのだが、ある日人だかりがしていた。鉄格子のなかにも人がおり、外の人と何やら会話をしている。昔、インドで見たマリファナ売り場を思い出した。ここも何かヤバイものでも売っているのだろうか。あくる日はもう誰もいなかった。

スペイン語教師にその話をし、あの建物は何かと尋ねた。なんと、それは留置場だった。捕まった人が、そこに留置されていたのだ。周りの人は、食物を差し入れに来たり、様子見に来たりしていた家族や近所の人だったらしい。捕まったら、食事は家族が運ぶのだそうだ。手渡しで何でも差し入れできるところ、誰でもが自由に捕まった人と会話できるところが、なんともおかしい。のどかと言えばのどかなものだ。

 何日か後、また人だかりがしていた。写真を撮ってもいいかと聞いてみたが、もちろん断られた。

凶悪犯の場合はどうするのかとスペイン語教師に聞いてみた。知らない、というのが答えだった。ここ数年間凶悪事件はゼロだそうだ。

内戦中、軍による虐殺もずいぶんあった村だ。今はもちろん戦争はないが、昔敵対していた人たちも同じ村に住んでいる。なのに凶悪事件は一つもないという。何か不思議な気がした。村内では、自警団が組織され、良く機能していて、犯罪は起こる前に防げるのだそうだ。

留置場   留置人が居る時でも看守がついているわけではない
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2012年5月 5日 (土)

第95号 危険な噂パート2

 先回のトドスサントスでの日本人殺害の話を聞いてから何日か経ったころだ。スペイン語の授業を受けに学校に出かけると、事務職員のノラと教師のアリシアがこそこそと話をしている。ウエウエテナンゴのラジオ放送で流されたという噂の話である。以下その概要。

 

 「ウエウエテナンゴの病院から一人のエイズ患者が逃走した。精神に異常をきたしているらしい。注射器に自分の血を採り、道行く人を捕まえては注射をし、エイズを感染させている。特に女性が狙われている。人ばかりではなく、牛や豚にも注射をして病気に感染させ、それを食べた人間への感染も狙っている。道行く人々だけではなく、白衣で医師を装って家庭訪問をしての注射も繰り返す。そして、現在はトドス・サントスに潜伏しているらしい」 

 

 そしてその話を聞いた日の午後、又何人かの人が話をしている。今度はパソコンを開いている。パソコンの記事の発信人はウエウエテナンゴの新聞記者だということだ。

曰く。

 エイズ患者が逃走し病原菌をばらまいているという噂がある。ウエウエテナンゴのすべての病院に確かめたが、そのような患者が逃走したという事実はない。又。噂の中には、犯人とされる人の人物像について正確な情報は何もない。この噂は、2000年に日本人観光客殺害に至った時の「子供をさらう悪魔集団」のうわさ話とよく似ており、危険な要素をはらんでいるので注意が必要だ。

 

 アンティグアのスペイン語学校の先生が、魔女は金曜日に現れるとか、なんだかおどろおどろしい話を真面目な顔をしてよくしていた。マクドナルドの店先に置いてあるマスコット人形の組んだ足が、時々左右入れ替わっているという話もまことしやかにささやかれていた。

 昔長いことホームステイをしていたアンティグアの家の主人が、グアテマラ人は、原住民であれラディーノであれ、魔女や呪術を信じる傾向が強いのだと話していたことを思い出した。

 

日本人殺害の2000年の事件はよく、呪術や迷信を信じる人々の存在とか、写真を撮られることは魂を持っていかれることだと信じ、写真を拒否する人々の存在とかが、その国の後進性や未開と関連づけて語られる。その後の、精神病のエイズ患者の噂は、グアテマラの後進性やそれゆえの怖さを納得させるのにうってつけかもわからない。

 

だが僕は、この話を聞いたとき一番に、関東大震災の時の朝鮮人虐殺に結びついた噂や、フランスで、若い女性が失踪するという噂が街中を覆い恐怖と不信が蔓延したという「オルレアンの噂」を思い出した。

 トドスサントスの事件は、遠い異国の秘境?で起きた後進性ゆえの事件と片付けないでほしいものである。

 遅れている?からではなく、未開であるからでもなく、物の理をわきまえない不可思議な人々の存在故でもなく、もっと普遍的な,あるいは意図をもった悪意を含む人間の心理的一現象だと考える。


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